役 割
鋼材に「錆」が発生すると外観を損ない機能を低下させ、さらにひどくなると強度を失わせることになります。防錆とは、文字通り「錆」を「防ぐ」ことであり、鋼橋の使用期間を延長させる非常に重要な要素です。また、防錆処理の代表的方法である塗装は、防錆効果のみならず、橋梁に美観性を与えることもできます。



 性 能
(1)
使用鋼材の腐食を防ぎ、鋼橋の寿命を延長させます。
 
(2)
自由に色彩を選べる塗装の場合は、特に景観に配慮できます。

 種 類
橋梁の形式、架設地点の状況、環境、景観を考慮して、適切な防錆方法を選定しなければなりません。
  塗装
  耐候性鋼材
  溶融亜鉛めっき


「新しい鋼橋」
(社)日本橋梁建設協会 平成11年8月
「耐候性鋼の橋梁への適用[解説書]」
(社)日本鉄鋼連盟(旧・鋼材倶楽部) (社)日本橋梁建設協会 平成13年2月




性能および特徴
塗装の大きな特徴は簡単な操作で広い面積をもつ鋼橋をそのままの状態で腐食から保護できるということです。また、他の防錆方法とは異なり、色彩を自由に選択できることも大きな特徴です。
塗料を鋼材の表面に塗布することにより、腐食の要因となる酸素、水、塩分を遮断します。また、鋼材面をアルカリ性にし、錆びにくくさせたり(不動態化)、鉛や亜鉛を含む塗料により、鉄がイオン化して溶け出すことを防止(犠牲陽極作用)する効果があります。

 
|長 所|
比較的簡単な作業により、防錆効果が得られます。
 
架設地点の環境や条件などの用途に応じて、一般塗装と重防食塗装を選定できます。
 
上塗り塗料の色彩を自由に選定できるため、周辺環境との調和が図れます。

|短 所|
塗膜が破損し易いため、塗装後の取り扱いに十分な配慮が必要です。
 
塗膜が劣化するため、塗替えが必要となります。
 
現場で中塗り、上塗り塗装を行う場合は、全面に足場が必要となります。また、天候や気温により施工が左右されます。
 
他の方法に比べ、現場での工程がかかります。





性能および特徴

鋼材に合金元素として銅(Cu)、クロム(Cr)、りん(P)などを添加したものを耐候性鋼材といいます。耐候性鋼材を大気中にさらしますと、初期には普通鋼と同様に錆が発生しますが、数年後には合金成分の効果により緻密な「安定錆」が鋼材表面を保護し、それ以上の腐食を防ぐことができます。
安定錆の層が形成されるまでは、錆汁が流れたり、色が不均一であったりと美観上好ましくありませんが、最終的な安定錆の色は黒褐色となり、山間部などでは非常に景観にマッチした色彩になります。この錆汁の流出を防ぐために、耐候性鋼材の表面に「錆安定化処理」を行う場合もあります。

 
|長 所|
鋼材自体が防錆機能を持つため、防錆のための作業がほとんど不要です。
自然の色に近いため、景観に適応します。
 
安定錆が均一に生成されれば、補修は不要といわれています。

|短 所|
飛来塩分の多い海岸部や、腐食性ガスの多い工業地帯では安定錆が生成されにくくなります。
 
環境のよいところでも、水やほこりの溜まる箇所には、安定錆が形成されにくくなります。
 
安定錆が生成されるまでは、美観上好ましくありません。
 
材料費で比べると、普通鋼材よりコストがかかります。





性能および特徴

鋼材の表面を耐食性のある金属(亜鉛)薄膜を溶着させて、鋼材表面から腐食の要因となる酸素、水、塩分を遮断します。また、表面に傷がついた場合にでも、鉄よりイオン化傾向の高い亜鉛が先に溶け出し、鉄の腐食を守ってくれる作用(犠牲陽極作用)があります。
溶融亜鉛めっきは、製作した桁を440℃前後で亜鉛が溶けている槽に浸せきさせ、鋼材表面に亜鉛を溶着させます。


 
|長 所|
鋼材表面との接着性が強い優れた防錆方法です。
 
亜鉛めっき面への美観・防食に配慮する場合には、めっき面への塗装も可能です。
 
多少の傷が生じた場合でも、犠牲陽極作用により、傷周辺の腐食を抑制できます。

|短 所|
めっき槽に浸せきした時の熱影響による部材の変形に注意が必要です。
 
めっき槽の大きさにより、部材の寸法が制限されます。
 
めっきのみでは「亜鉛色」しか出せません。
 
高力ボルトをめっきする場合、一般的に用いられています「F10T」では強度的な問題があり、強度の低い「F8T」を用いますので、添接に用いるボルト本数が増えます。