役 割
主桁とは、主として荷重を下部構造に確実に伝達させる部材のことをいいます。
トラス橋では主桁の代わりに部材を三角形に組み合わせた上弦材、下弦材、斜材そして垂直材を用いています。また、アーチ橋ではアーチの弦材であるアーチリブがこれに相当します。
ここで言う「荷重」とは、床版の自重や床版を介して伝達された「垂直荷重」で、風や地震などの「水平荷重」は横桁・対傾構・横構で受け持ちます。



 性 能
(1)
床版から伝達された自動車や人などの荷重や上部構造の自重を下部構造に伝達します。
 
(2)
自動車や人などの荷重により有害な変形が生じません。
 
(3)
死荷重、活荷重、地震の影響などの荷重に対して、橋に適切な安全度があります。
 
(4)
荷重や環境作用による経年変化を生じた場合にも、構造物の安全性が極端に低下することなく、設計供用期間において所要の性能が確保できます。

 種 類
支間長や架設地点の状況、あるいは景観などを考慮して形式を選定する必要があります。
  桁 橋
  トラス橋
  アーチ橋
  ラーメン橋
  斜張橋
  吊 橋

>>>構造形式による作用力



性能および特徴

鋼橋として最も基本的な形式です。力学的にも単純明快で、梁の曲げモーメントを主として受け持つ上下フランジと、せん断力を受け持つ腹板を組み合わせた薄肉構造であるため、最も一般的に採用されている主構造形式です。なかでも、I桁や箱桁が多く用いられています。
I桁橋は、各主桁のねじり剛性が小さいため、直線に適した形式で、設計・製作が容易で鋼重も小さく経済的です。また、箱桁橋は、曲げ剛性とともに、ねじり剛性も大きく、長支間・曲線橋に適した構造といえます。

 
|長 所|
力学的に単純明快な構造です。
 
設計、製作、架設が容易にできます。
 
他の上部工形式に比べ、経済的です。

|短 所|
長大支間には適用できません。
(I桁で60m程度、箱桁で80m程度まで)
 
I桁で部材長が長すぎると、輸送や架設時に座屈を生じる恐れがあります。





性能および特徴

桁の代わりに軸引張部材および軸圧縮部材を三角形状に組み合わせて、全体として荷重に抵抗させる構造形式を「トラス」といいます。力学的には、外力による曲げモーメントを上下の弦材に、せん断力を斜材および鉛直材で受け持たせるので、トラス部材には軸力しか作用せず、設計も容易になります。
また、桁橋と比べて少ない鋼材で主構高を高く出来るので、比較的長い支間に適用できる橋といえます。

 
|長 所|
部材が小さいため架設地点までの輸送や現場での取り扱いが容易となります
 
上路トラスを適用しますと下部構造を低くすることができるため、上下部構造全体として経済的となります。

|短 所|
トラス格点部に水やほこりが溜まりやすいため防錆に留意する必要があります。
 
部材数が多いため、桁橋に比べ架設工程が伸びます。





性能および特徴

アーチ橋には、他の上部工形式よりもはるかに多くの種類があります。基本的にはアーチ部材が軸力と曲げモーメントを受け持つのですが、それ以外の部材の配置などにより、以下のように分類されます。

《アーチ橋》
|長 所|
剛性が高く、たわみによる付加応力を小さくすることができます。
 
渓谷や海峡部に適しています。
 
景観的に優れています。

|短 所|
固定アーチ、2ヒンジアーチの場合、強固な地盤が必要です。

《ランガー桁橋》
|長 所|
アーチリブは軸力のみを受け持つため、補剛桁に比べて断面を小さくすることができます。

|短 所|
アーチリブと補剛桁の取り合い構造が複雑となります。
 
やや振動しやすい構造です。

《ローゼ桁橋》
|長 所|
アーチリブと補剛桁の剛比を任意に選べるため、設計の自由度が高くなります。
 
アーチリブの剛性が高いため、吊材間隔をランガー桁橋より多少広くすることができます。

|短 所|
アーチリブと補剛桁との隅角部の設計に留意する必要があります。

 

《ニールセン系橋》
|長 所|
他の形式に比べて、軸力を増加させることなく、曲げモーメントを低減することができます。
 
他の形式に比べて、たわみを小さくすることができます。

|短 所|
ケーブルを用いるため、コストがかかります。
  ケーブルの張力管理に留意する必要があります。





性能および特徴

T形やπ形をした主桁と下部構造(橋台や橋脚)の接点を回転できないように剛結合し一体構造としたものがラーメン橋です。ラーメン橋の各部材には、軸力、曲げモーメント、せん断力が同時に働きます。
ラーメン橋は桁橋に比べて主桁部分の重さが軽く桁下空間を広くとることができ、それを活かした高架橋も多く見られます。

|長 所|
深い渓谷を横断するのに適した橋梁です。
 
耐震性に優れています。
 
主桁と下部構造が剛結合されているため、支間中央部の曲げモーメントを小さくすることができます。
 
主桁と下部構造が一体化されているため、景観面からも優れています。

|短 所|
隅角部には大きな曲げモーメントが働き、応力が集中しやすいので十分な配慮が必要となります。
 
隅角部は形状、重量とも大きくなりますので、輸送や架設に留意する必要があります。





性能および特徴

斜張橋は、桁橋の支間の途中を、数箇所ケーブルによって斜め方向に支持したもので、その構造系は一種の連続桁ともいえます。
経済的な適用支間は、桁橋と吊橋の中間とされていますが、補剛桁の形式やケーブルの工夫により、適用できる支間は伸びています。

 
|長 所|
吊橋に次いで、長支間化を図ることができる橋梁形式です。
 
ケーブルの張力と補剛桁の剛性のバランスを変えることにより、幅の広い設計が可能です。
 
景観が優れており、ランドマークとしての役割りを果たします。

|短 所|
橋長に比べて、桁の剛性が小さいことから、風による影響について十分な検討を行う必要があります。
 
ケーブルを用いるため、コストがかかります。
 
ケーブルの張力管理に留意する必要があります。





性能および特徴

橋台および主塔間にケーブルを架け渡し、吊材に路面部分を吊り下げた構造が吊橋です。この路面を構成する桁には、吊橋の剛性を高めるため補剛桁または補剛トラスが用いられます。吊橋は他のトラスやアーチ、桁橋等と比べて剛性が低いため、荷重によるたわみが比較的大きく、風による影響も考慮した設計が必要になってきます。
吊橋の主要部材であるケーブルは、吊材を含むケーブルの自重および補剛桁とこれにより支持される床版・床組などの自重を主塔およびアンカレイジに伝達する役割りを持っています。また、補剛桁は、床版や床組からの荷重をその剛性により分散し、吊材を介してケーブルに伝達することと、ケーブルとともに橋体に鉛直および水平方向の剛性を与えることが大きな役割りといえます。


|長 所|
現在、最も長支間化を図ることができる橋梁形式です。
 
景観が優れており、ランドマークとしての役割りを果たします。

|短 所|
その他の構造に比べ、極めてたわみ易い構造であることから、風による影響について十分な検討を行う必要があります。
 
ケーブルを用いるため、コストがかかります。
 
大型の吊橋の場合、橋脚や橋台以外にケーブルによる張力を支えるアンカレイジを設置する必要があります。